【東茶屋街】−金沢は加賀藩100万石、金沢城の城下町で、当時は一般的に石高に比例して家臣の数も多くなった事から、日本でも有数の都市として発展しました。金沢城下の大きな特徴として茶屋街が東西2カ所の廓が設けられ事で(明治時代に入り3箇所目の主計町茶屋街が成立)、東茶屋街はその中でも最大規模を誇りました。現在でも多くの茶屋建築や町屋建築が軒を連ね、江戸時代の茶屋街の雰囲気が存分に残されています。代表的な茶屋建築である「志摩」は文政3年(1820)に建てられたもので、木造2階建(1部3階)、切妻、桟瓦葺、平入、1階正面は格子戸、2階は全面簾が下がり手摺が付けられています。内部で特に目を引くのが鮮やかな色彩で、弁柄の壁や精緻な意匠を施された金物など往時の茶屋文化を垣間見る事が出来ます。「志摩」は東茶屋街の中に残された茶屋建築の遺構として大変貴重な存在で平成15年(2003)に国指定重要文化財に指定されています。懐華楼(旧志ま屋・旧越濱)は江戸時代後期に建てられたもので木造2階建て、切妻、平入り、桟瓦葺き(旧石置き板葺き)、桁行6間、梁間12間、内部は朱漆溜塗りの大階段、弁柄の壁、濃紺の壁、床の間、違棚など当時の茶屋建築の特徴が見られます。懐華楼は現在東茶屋街に残る茶屋建築の中で最大で往時の形状を良く留めている事から名称「旧越濱」として平成3年(1991)に金沢市指定保存建造物に指定されています。東茶屋街の中で特に往時の町並みが残されている金沢市東山一丁目、面積約1.8ヘクタールが平成13年(2001)に名称「東山ひがし重要伝統的建造物群保存地区」、種別「茶屋町」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
又、東茶屋街から見て浅野川大橋を超えて浅野川の対岸に位置する主計町茶屋街は明治時代に成立した茶屋街で、細い路地には明治後期から昭和初期にかけて建てられた3階建の茶屋建築や料亭建築が密集して建てられ、東茶屋街とは異なる雰囲気の町並みが見られます。主計町茶屋街の特に町並みが優れている約0.6ヘクタールは「主計町重要伝統的建造物群保存地区」との名称で平成20年(2008)に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
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