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 神社山門: 稲爪神社

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稲爪神社

稲爪神社(兵庫県明石市大蔵本町)
【 概 要 】−稲爪神社は推古天皇の御代に朝鮮半島から賊徒が侵攻した際に大変苦戦し、三嶋大明神の御告げにより掃討を命じられた小千益躬は大勝利を収める事が出来ました。小千益躬は神意に感謝し当地に三嶋大明神を祭る社を設けて当社を創建しました。格式も高く平安時代に成立した延喜式神名帳に式内社として記載されていました。江戸時代に入ると現在地に境内を移し、歴代明石藩主から僅かながらも社領が安堵されていました。

【 場 所 】−兵庫県明石市大蔵本町

【 構 造 】−入母屋、本瓦葺、三間一戸、八脚単層門

【 備 考 】−稲爪神社の縁起によると推古天皇の御代に三韓(朝鮮半島の古代国家:高句麗・百済・新羅)から「不死身の鉄人」と呼ばれた大将が8千人の兵を引き連れ日本に侵攻し、天皇は伊予国(現在の愛媛県)の役人である小千益躬に討伐を命じました。小千益躬は苦戦を強いられたものの、一族の守護神である三嶋大明神(大山祇神)に祈念すると、鉄人の弱点が足の裏である事の教えを受けました。益躬は一端降伏し安心させ近くから機会を窺っていると、突然稲妻が落ち、驚いた鉄人が尻もちをつき迂闊にも弱点である足の裏を曝け出してしまいました。益躬はその機会を見逃さず鉄人の足の裏を射抜くと討ち取る事が出来、8千の兵も四散した事から、この地に三嶋大明神(大山祇神)を祭る稲爪神社を創建したと伝えています。

上記の由緒に多少の脚色があったとしても、ある程度事実とすれば、大陸(朝鮮半島)から大軍が当地まで侵攻した事になり、国家の危機、一大事として日本書紀や古事記などの歴史書に何らかな記事があっても良いと思われますが、それと思われる事跡を見る事が出来ません。一方、小千益躬を伊予国造の越智氏の一族として、その「越智系図」には越智益躬が推古天皇の御代に鉄人を大将として攻めてきた異国の戎人を播州蟹坂(現在の兵庫県赤穂市)で討ち取ったと記載され、越智氏の後裔とされる河野家の家譜である「予章記」では益躬が推古天皇の御代に鉄人を大将として攻めてきた百済の兵を播州蟹坂(現在の兵庫県赤穂市)で討ち取ったと記載されています。又、愛媛県松山市に耳塚と呼ばれる塚があり、益躬が鉄人とその従者を討ち取った後、耳を削ぎ取り塚に埋めたとの伝承が残されています。さらに、鎌倉時代に成立した「二中歴」には辛丑(西暦:581年)に新羅人が筑紫から播磨に至り、これを焼くとの記載があり、やはり朝鮮人が攻めは入ったと思われる記述があります。

上記の「越智系図」と「予章記」の伝説の舞台となった播州蟹坂(現在の兵庫県赤穂市)には坂上寺と号する真言宗の寺院が境内を構えていますが、「明石名勝古事談」には次のような伝説が記されてます。昔、坂上寺のある地には赤浦鉄人の屋敷があり、そこに住まう文石小麻呂は仮面や動物の皮を被って旅人や商船を襲い金品を強奪していました。雄略天皇13年、天皇は小野太樹に文石小麻呂と鉄人の討伐を命じると、小野太樹は100余名の兵隊を率い鉄人館に攻め入り館に火を放ちました。すると、白犬に姿を変えた文石小麻呂が最後の抵抗を試み襲い掛かってきましたが小野太樹が一刀両断し鉄人も掃討、遺体と武器は塚を設けて埋めたと伝えられています。

さらに、上記の「明石名勝古事談」の伝説に似た記事が日本書紀・巻第十四「雄略紀」に掲載されています。要約すると「播磨国御井隈に気性が荒く腕が立つ文石小麻呂と呼ばれる人がおり、暴虐で素行が悪く、道行く人の行くてを阻み時には商人の船を止めて全てを強奪しました。さらに、国の定めた法も守らず、税金も納めなかった事から天皇は春日小野臣大樹と勇敢な兵士100人を派遣しました。邸宅を取り囲み火攻めをすると、炎の中から馬位の巨大な白犬が飛び出してきましたが、大樹は顔色を変えず抜刀し斬り付けました。すると、白犬は文石小麻呂に姿を変えました。」となります。

以上の事から察すると、元々は日本書紀に記載されていたものが、後世、日本書紀を知る識者が播州蟹坂(現在の兵庫県赤穂市)で伝説を流布し、その際に「鉄人の館」を付加、その後、伊予国造の越智氏は豪勇を主張する為に春日小野臣大樹を一族である越智益躬に差し替え、文石小麻呂を大陸(朝鮮半島)から攻め入った鉄人としました。さらに、越智氏の後裔が神官を歴任した大山祇神社(今治市大三島町)の信仰を広める為に稲爪神社が創建される際に、さらに伝説が脚色され稲爪神社の縁起が創作されたと思われます。

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