曲り屋と茅葺: 岩手県の古民家の特徴の形式の1つに曲り屋と呼ばれるものがあります。江戸時代の旧南部藩の領内は馬の産地が多かった事から発展したと考えられ、当時の通常の古民家は母屋と厩が分離されているのが多い中、母屋と厩が一体となっています。平面構成の大きな特徴は、概ね主屋の東側に土間の台所が設けられ、その南側に厩がある構成で大きくL字型の形状をしている事から「曲り屋」の名称の由来となっています。当時の牛馬は労働力の一翼を担う大変貴重なものとして家族と同様に考えられ、特に寒さの厳しい冬場には台所の竈や居間の囲炉裏などから出る僅かな暖気でも厩に伝へ、少しでも負担を和らげるような思想に基づいているそうです。その為、L字型(厩)の突出部の屋根には煙が流れ易いように、破風などが設けられる例が多く、その暖気を利用して乾し草などの乾燥にも利用されています。秋田県や新潟県など特に日本海側で見られる中門造も基本的に同様な思想から生まれ平面的にはL型で見た目には似ていますが、中門造が突出部の厩部分が玄関にあたる出入口があるのに対し曲り屋は玄関が主屋部に設けられる為、相対的に主屋の間口が広くなる傾向が見られます。岩手県では略全域に南部曲り屋が見られ集落景観の代名詞のような存在でしたが、茅葺屋根の維持管理には多額な費用がかかる為、他地域と同様に現在では余り見られなくなりました。主な遺構は旧佐々木家住宅や千葉家住宅、旧小原家住宅、旧菊池家住宅が国指定重要文化財に指定されています。又、遠野市の砂子沢集落は曲り家民家群が見られる集落で当時の集落の様子を現在に伝えています。
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